キリマンジャロのアホ


序章:日常に不足したもの

本編:キリマンジャロのアホ
後記:登頂したい人たちに    

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2000.09.20
アタック 祈り

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AM0:30 アタックのはじまりだ。
眠りから覚めた感触では、高山病は良い方向にも悪い方向にも向かっていない。
4,700Mで充分な順応ができる前に睡眠を取ったのであるから、症候状態であっても歓迎すべき状況である。

出発前の食事は、アリが日本から持って来てくれたレトルトの粥をすすった。
このような希薄酸素の状況では、誰もがスポーツゼリーや粥のような流動食をありがたいと感じるのだ。 

呼吸は、全神経を集中して行ってもまだ苦しく、氷点下の空気は鋭く肌を刺す。

出発前に皆で相談した事は、少しでも装備を軽くする事であった。
その為に、私のバカチョンカメラを共同装備とした。(記念撮影用だ)
担当は、ドーネンだ。
私の一眼レフは、氷河を収めるために、長物一本だけを腰に装備する事とした。
「ZAKIさんが遅れた場合はどうするのですか?」と、ドーネンがたずねる。
何を、答えたかは記憶に無いが、私はここで人生の終わりを迎えたとしても、あきらめることの方を恥と考えていた。
他人に対してではなく、自分自身に対して言い訳をするつもりは無かったと記憶している。

吐く息が、頭に巻いたマグライトの光を反射する。
何を祈ったか分らない。
Ave Mariaをラテン語で、声を出して1回だけ歌った。

出発の時が来た。