キリマンジャロのアホ


序章:日常に不足したもの

本編:キリマンジャロのアホ
後記:登頂したい人たちに    

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2000.09.18
ホロンボハットの夜はふけて

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今夜も、高山病予防の為に、紅茶をたっぷりと飲んだ。(ビールも少し飲んだ)
今夜は、6人一緒の大きな小屋で眠る。
小屋と言っても、それは頑丈なログハウス。小さな窓ははめ殺しだ。
それが前後に2部屋続きの構造になっているようだ。

昨日の経験から、当然ながら神様は下段のベッドに納まってもらった。

高度3,720Mの夜は氷点下まで冷え込む。
当然、何度かはトイレに起きることになる。
上段のベッドから、できるだけ静かに抜け出し、重く大きな木製の扉を開く?はずなのだ
が???
どうしたわけか、扉が開かない。
この扉は押すと開くはずである。

そういえば、昼間アリがこの扉を渾身の力をこめて引いていた。
私は、「ガイドでも高山病になるのかな」とその姿を黙って見つめていたのであった。
私が寝ぼけているわけではない。
押しても、引いても重い大きな木製の扉は開かない。

アリを起こして状況を説明する。
そういえば、皆が眠りについた直後、どこかの外人がこの部屋の扉を空けて何か訳のわからないことを言って出て行ったのを思い出した。
「ヤツだ!」「ヤツが外からカギをかけてしまったのだ!」
そうなると、中から開くはずは無い。
しかし、どう見ても頑丈そうなこの扉をこじ開けられる術はない。

アリが、壁をたたいて隣の部屋に助けを求める。
「Anybody! Anybody!」 「Listen! Somebody locked our room. Please help us!」ってな具合だ。
しばらくすると、隣から声がした。どうもフランス人らしい。「俺達ゃ寝てるんだ!」などと言っている。
しかし、こっちはトイレに行きたい。
アリが しつこく壁をたたくが、応答は少ない。
痺れをきらした御隠居も「Neighborhood! Neighborhood!」と叫びながら壁をたたいている。

「Neighborhoodなんて単語久しぶりにきくなぁ。何だっけか?」などと考えながら、今夜もふけていくのであった。