話し合われたこと


6月26日 16:00  

僕の頭は、既にスッキッパーの重責がうごめいていた。
レースで少しでも上位に入るため、ボスである仲村氏に厳しい意見をぶつけた。

ニヌハ2には転覆を防止するアウトリガーが装着されている。
しかし、漕ぎ手の着座位置はまるでアウトリガーのない艇のように、船底近くに設けられている。
そこで、この激論が始まった。
漕ぎ手のパワーを最大限に生かすためには、船体に身体を押し付けるような不自然な姿勢ではなく、ハーリーの選手のようにまっすぐ正面を向いて着座させる必要を感じたからだ。

しかし、仲村氏はそんなことは百も承知していた。
「今回のスキッパーはzakiさんなんだから、やりたければやればいい。だけど、それは旅サバニとして生まれたニヌハの姿ではない。」
さらに、仲村氏は外洋の波の中でバランスがいかに重要であるかを語り始めた。
また、将来チームの技術が向上しアウトリガーを外す事ができたら、どんなに素晴らしいかを語り始めた。
僕は論拠を失い、彼に従うことにした。
彼の目は、さらに遠くを見つめていることを知ったからだ。
僕はレースを捨てたのではない。
スキッパーとして、バランスの良い艇の方がレースにおいても有利だと判断を下したのだ。
ただし、それを証明するTESTをどこかでやる必要を感じていた。

時間制限のある中で、艇のセッティング変更作業が始まった。
sagyou